第7章 怪しいお薬
(お、呼び捨てだ)
仕事中、ナナバは必ず"ハンジ分隊長"と呼ぶ。勿論、目上のハンジを敬っての事。
それがないということは、プライベートでの件であろう。ハンジはあえて肩の力を抜く。
「遠慮なく何でも言ってよ。ばーっと吐き出しちゃえば楽になるかもだし」
「そう、だね」
「私、案外聞き上手だしさ。ってリヴァイに言ったら『笑ねぇ冗談だ』だってさ。酷くない!?」
「ふふ……実は、昼間…」
…
…
…
「なるほど…」
失礼だけど整理させてね。
そう言ったハンジへ、ナナバは小さく頷いて答える。
「ナナバはエルヴィンに『好き』って言いたい。でも恥ずかしくて言えない。で、付き合い始めからそのまま今日まできた、と」
「うん…」
向かい合って 目を見て 言葉にして
いつだって言いたい
いつだって伝えたい
エルヴィンが『好き』だ、と
勿論、態度では示してきたつもりだ。
だが…
『言われてはいない』
何度摘んでも繰り返し芽吹くこの言葉に、やはり言葉にしなければ伝わらないのだろうかと、不安になる。
「きっとこのままだと…
エルヴィンに嫌われて…」
「えぇ?!そんな事ないと思うよ?
う~ん、でもそっか。
何かいい方法、ないかなぁ……
あ 」
「…?」
「あぁ、いや…
実はね、今巨人用の薬を開発中でさ」
目をキラキラさせたハンジがいう薬とは、対巨人用の催淫剤。
何故そんなものの開発に至ったかというと…理由は簡単、一番謎が多い部分だから。
だから、そこを刺激してみたらどうだろう?何か新しい発見があるかも。というのが此度の研究の趣旨らしい。
「ハンジ…」
「ん?何々?ナナバも興味ある~?」
「どうだろう?という以上に『どうなるか見てみたい』という方のが大きそうだね」
「……ばれたか」
ハンジはぺろっと舌をだす。
「ま、そんな訳でだ。
可愛い可愛い巨人達の性的興奮を高める!
そういう凄い薬だよ。…予定ではね」
「それ…何処にある?」
「私の執務室だけど、見に来る?
話の続きもしたいし!私は大歓迎!!」
こうして、二人は連れ立ってハンジの執務室へ。そこでナナバは件の薬を口にする。
巨人用の、催淫剤を…