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まったりの向こう側

第7章 怪しいお薬





部屋に入り、ハンジから渡されたメモに目を通す。


「…!」

「エルヴィン…?」

「あぁ、いや…何でもないよ。
 ナナバ、どれにする?」

「…梨がいいな」

「分かった」


大きな手で包む様に持ちナイフを当てる。
器用に切り分けていくその様子に、ナナバは見惚れていた。


「エルヴィンは何でも出来るんだね」

「そんな事ない、あ……」

「?」

「しまった…これだと食べ辛いか」


そう言って差し出した小皿の上には、八等分された梨が二つ。


「可愛い…」


器用にも"うさぎさんカット"になっている。


「いや、これは…
 小さくするから、少し待っていて」

「それがいいな。だめ?」

「君がいいなら。さ、召し上がれ」


起き上がり、ナナバは一口頬張った。エルヴィンの差し出すフォークの先から。

リスのように少し膨らんだ頬が動くのにあわせ、しゃりしゃりと小気味良い音が聞こえてくる。


「美味しい」

「……その、…練習、したんだ」

「練習?」

「君が喜んでくるれかと思って。
 最近漸く形が整ってきてね。
 だから、つい手が動いてしまった…」

「そっか。ありがとう、エルヴィン」


そう言って笑うナナバはいつも通りに見えた。薬の影響はまだあれど、気分的には大分落ちついたようだ。


…今なら、聞けるだろうか。


「…ナナバ」

「ん?」

「どうして、あんな薬を」


びくりと肩を揺らし、視線を落とす。


「それは…」

「言いたくないならいいんだ。ただ…」

「ハンジから、聞いたんだよね」

「あぁ、すまない…」

「謝らないといけないのは、私の方。
 ごめんねエルヴィン…」


そう言ったきり、ナナバは黙り込んでしまった。


「待て…待ちなさい。何故君が謝るんだ?」


泣いていたと、そう聞いた。
それなのにナナバは『自分が悪い』と謝罪する。

もう何が何だかわからない…

(だめだ、落ち着け)

まず、薬を飲んだのはナナバの意思。ハンジが言うにはナナバの希望を叶える為。
そしておそらく、その希望に関係してナナバは泣いた。


「…エルヴィン、ごめんね。いつも…」

「ナナバ…
 頼む、聞かせてくれ。何があった?」

「それは……」


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