第2章 学校へ行こう
長月市立高等学校。
職員室へと続く廊下。
『はぁ…まさか、また制服を着て、学校に通うなんて、思いもし無かったですよ』
「仕方ないですよ、ほら、また学生からやり直せるって思ったらどうですか?何だがワクワクしてきませんか?」
『…創一郎兄さん、楽しそうっすね…』
ため息交じりに漏らす在音。
落ち着いたブルーを貴重とした制服に、ベージュのサマーベスト、紺色のハイソックスに学校指定のローファー。
顔には茶色の縁の眼鏡を着けていた。
制服は創一郎兄さんに用意してもらった。
何故、三十路も過ぎた私が制服に身を包み高校へと足を運んでいるかと言うと。
遡るは2週間前の出来事である。
初めて私が創一郎兄さんと出あった夜。
私が今まで居た世界と今のこの世界は違う、と言う話しをされた後である。
「それに、在音さんは現在の年齢は30歳とおっしゃられましたが、私には到底見えません。」
せいぜい20代前半か10代後半です。と言う・・・
『またまたぁ、お世辞はいいですよ』
お世辞を言われて、まんざらでもないおばちゃんの様なそぶりで笑う在音。
「いえ・・・お世辞ではありません。」
そう言いながら、ずいっと差し出された鏡。
その鏡に映し出されていたのは、毎朝化粧をするときに見ていた、少し疲れた自分の顔ではなく、まるで10代まで若返った様な自分の顔だった。
『?!!??!!』
思わず食い入る様に鏡を見つめる在音。
その表情は驚きに満ちていた。
「ね?30歳には見えないでしょう?」
『他・・・確かに・・・あっ!でも本当ですよ?!嘘はついてません!!確かカバンに・・・・』
ぱっと我に返った様に創一郎にそういうとすぐ横においていたカバンの中を漁る。
手帳や定期や筆箱の下から出てきたのは財布。
確かここに免許証が・・・!!!
ばっと財布の中から免許証を取り出すと、創一郎の目の前にずいっと出す。