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一人だけど、独りじゃない

第1章 プロローグ


「・・・!!」


「・・・・・ぶ・・・すか?!!」


「大丈夫ですか?!」


どのくらい倒れていたかはわからないが、かすかに聞える声に、ゆっくりと目を開ける。
ぼやけた視界に移る一人の人影

「よかった、気がついた様ですね。」
「?!!!」

だんだんとはっきりとしてきた視界に、見知らぬ男性の顔が映り驚く。

年齢はだいたい20代半ばといったところだろうか?
奥二重気味の涼しげな目元にゆるく癖のある髪。
和服の似合う綺麗な顔立ちの青年。

「怪我等はありませんか?」

驚きの余り、放心状態で青年の顔を凝視していた在音の顔を、不思議そうに覗き込む青年にまた驚く

「だっ!!だだだだだだ大丈夫れすっ!」

思わず噛んでしまった。

先ほどとは、また別の種類の動悸に、あわてて深呼吸を始めあたりを見回す。

あ・・・・・れ・・・・・・?

ありえない出来事を目の当たりにして思わず立ち上がる

「?どうしました・・・・?」

私の記憶が確かならここは電車の中のはず・・・・

呆然と立ちすくむ在音の周りはなぎ倒された木々で囲まれていた。

「・・・・どういう・・・こと・・・?」

がくがくと足が震えだし、のどが一気に乾く感覚に襲われ声が出なくなる。

自分は確かに電車に乗っていた。それなのに今自分の周りに広がる景色は記憶を辿っても思い当たらない暗い山の中。

なんだこれは・・・・

と目を見開きながら力なく座り込む在音
余りの驚きに震えが止まらず、自分の肩をぎゅっと抱くと、その手にそっと暖かい物が触れる

「何があったかお話しして頂きたいのですが、とりあえず移動しましょう冷え込んで来ましたし・・・・。」

青年は在音のすぐそばにしゃがみ、優しい柔らかな笑顔を向けて静かに言う。

「私の名前は林創一郎と申します。」
「林です…林 在音」


これが私がこの世界に来て初めてできた知人
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