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一人だけど、独りじゃない

第1章 プロローグ


「!!!!!!!!!」

驚きの余り思わずドアに背をべたりと着け、張り付く様な形を取る。
何故なら、目の前に現実では見たことが無い様な生き物が、こちらをじっと見据えて居たからだ。

大きさはおおよそ30cmで黒いカラスの様な翼を背中に持ち、大きく黒いくちばしに昔話で出てくる天狗の様な装い、そして不気味で大きな瞳が一つ。
その手には錫杖(しゃくじょう)を持ちシャン、シャンと一定のリズムで鳴らしている。

「ケケッ・・・ケケッ・・・」

何をするでもなく、何かが起こるわけでもなく、ただ、ただ在音を見つめながら笑って居る様な声を漏らす生き物。
その生物を凝視しながら、理解不明の不安感と胸騒ぎに襲われ半ばパニックに陥る

何だこれ、何だこれ、何だこれ、何だこれ、私疲れてるのか?疲れてるのか?!疲れてるよね?!

半泣きになりながら謎の生物とのにらみ合いをしていると、不意にその生き物が羽ばたきだし、在音の目線ぐらいの高さまで上がる

あ、飛べるんだ・・・

なんて謎の生き物の行動に意表をつかれ、のんきな事を思いながら目で追っていると

「ケケッ・・・ケケケッ!メガアッタ!メガアッタ!!メガアッタゾ!!!」

とくるくると空中で周り出した。
その声は何とも不気味で、そのくるくると回る様は何とも不吉で、にらみ合いの間に少し慣れて薄れた恐怖心がまた増幅する

「ツレテク!ツレテク!ツレテク!!」
「っっっわぁっ!!」

クルクルと回っていたかと思うと、突然近づいてきた。
驚いた拍子に扉から背を離し、避け様とすると、ソレを追ってくるくると在音の周り始めた。
大きな目はコチラを見つめたまま

「ツレテク!ツレテク!ツレテク!ツレテク!ツレテク!!」
「っ・・・・いやぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!」

繰り返される不気味な声に言葉に、破裂寸前まで増幅した恐怖で、思わず目をつぶり悲鳴を上げると

ガッ

足元に何かが刺さった衝撃に、かたくつぶっていた目を開けて足元を見る。
その瞬間、青白い光に包まれ、意識が遠のいていく

「ギギギギギギギィィィィイイイ!!!!!!!!!!」

遠くの方で、あの謎の生物の物と思われる叫び声が聞こえ、意識を手放し、地面へと倒れこんだ。
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