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一人だけど、独りじゃない

第1章 プロローグ


「はぁ…たまらん。」

ぐーーーっと背伸びをして、
パソコンが落ちたのを確認する。
周りはちらほらと、まだ残業をこなしている社員がいるが、人数は少なく昼間よりもしずかだ。
ため息を一つ吐き、カレンダーの今日の日付に斜線を引きカバンを持つ。

退勤するために、さすがIT企業という感じの静脈認証パスで退勤の処理をし、会社を出て最寄りの駅へと向かう。

ふぁーあ…疲れた…

大きなあくびをしながら、自宅の最寄り駅へと続く電車へと乗り換える。

時刻は22時を回り、駅のホームには仕事帰りに飲みに行ったサラリーマンや、自分と同じ疲れた顔をしたOLがぽつぽつと見られた。
在音はぐーっと背伸びをすると、4分後に出発する電車に乗り込み、座席へと座る。

スプリングの効いた椅子が優しく沈み、じんわりと電車の暖房の暖かさが外気に触れた体に染み渡る。

あぁ・・・これはヤバイ

座席の足元から出ている温風で足が暖められ、冷えた足があったまり眠気を誘う。
疲れていたのもあわさって在音は静かに瞼を落とす。

何分経っただろうか?ふと周りの静かさに違和感を覚え、静かに目を開けると人気の無い電車内が視界に広がる。
どうやら電車は動きだした様で、外に目をやると暗闇が広がり、時折通り過ぎていくライトが地下を走っている事を示している。

いつの間にか寝てしまったのか。。。

と思い寝ぼけている頭で周りを見渡す。

あれ・・・・??

自分が乗っている車両はもちろん。
両隣の車両にも人の気配を感じず、少し不安になる。

あれ?もしかして私、ぐっすり寝すぎて車庫まで行っちゃってる感じ???

車庫に入る前の車内確認とかってしないの?!とか思いながら、足早に車掌しつへと向かう。
電車は相変わらず真っ暗な闇の中を走り続ける中、前へ前へと車両を移るが一向に車掌室へと辿り着かない。

何だこれ、何だこれ、何だこれ

だんだんと深まる不安から鼓動が早まりヘンな汗が額に出てくる。
どのくらい前へ前へと車両を移っただろう?普通ならばすでに車掌室へとたどり着いているであろう時間を当に過ぎ、途方にくれかけた頃にやっと車掌室の扉が出てきた。

もう既に普通ではない状況に居る中、早まる鼓動を落ち着かせて車掌室をノックしようとしたその瞬間


カタンっ

背後から何かかたい物が床に落ちた音に思わず振り返る
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