第3章 部活に入ろう
「・・・・・。」
いい天気で風も冷たくないので、何時もの特等席へ向かおうと、屋上へ出ると見慣れぬ先約が、驚くほど無防備に眠りこけていた。
なんとまぁ…無防備以外の言葉が当てはまらないぐらい無防備だな…
先日、部活で話題になってた人物を見つけ、直ぐ前にしゃがみこむと、まじまじと顔を覗き込む博臣。
少し大人っぽさを感じる眼鏡とは逆に、あどけなさを感じる寝顔が、何処と無く頼りなさげで、思わずその無防備な寝顔に釘付けとなる。
まさか……?
微かに感じる感覚に、少し表情を和らげながら、今だに眠っている在音の隣に腰を下ろすと、太陽の光に当たり、艶やかに光る色素の少し薄い髪に触れてみる。
さらさらと指先を滑り落ち、白い肌をかすめる。
『…んー…』
「?!」
むにゃむにゃと、まるで漫画の様に何か寝言を言うと、さらに無防備な表情をし、軽く寝返りをうった在音の頭は、重力に逆らうことなく、博臣に寄りかかる
爽やかな柑橘系のシャンプーの香りが、微かに風に乗って香る。
身長の差で肩まで届かず、腕に寄りかかった頭や肩、微かに触れている腕から温もりを感じ、そっと手に触れてみる
「!…」
反射的にだろう、冷たい博臣の大きな手を握る、小さな暖かい手。
熱…?ではないない…
握られた手から伝わる体温の高さに驚き、再度顔を覗き込むが、相変わらずの安らかな無防備な表情。
これは、アッキーの脇の暖かさを超えたな…
じんわりと温められる手に、唇の端をあげながら持って来ていた文庫本を開いた。