第6章 君の気持ち
「...うん、元気でたよ。ありがとう、優衣ちゃん」
「ううん、不二くんが笑ってると、私も嬉しい」
「へ」
「え?...あ」
君の言葉にボクが思わず呆然としていると、しまった、みたいな顔をした君は顔を赤くして俯いた。
ねえ、ボクは、君の気持ちを、期待してもいいのかな。
もしかしたら君も...
ボクを想ってくれてるって。
「ふふ、嬉しいなあ」
「わ、忘れてください...」
「嫌だよ、忘れるなんて...折角君の可愛い所が見れたのに」
「うぅ...」
恥ずかしがっている君が、一等可愛いんだ。
だからボクは、君をからかいたくなってしまう。
「ね、優衣ちゃんこっち向いて?」
「今は無理...」
「...じゃあ、手を繋いでもいいかな」
「うん......え!?」
「あ、こっち向いたね」
「~~~もう!からかったの?」
「ふふ」
からかったの半分、本気半分。
君と手を繋いで歩くっていうのは、とても幸せそうだな、と思うけど、まだなんの肩書きもないボクがそんなこと出来るはずもなくて。
本当の気持ちは隠して、君をからかっていることにする。
自分の頬の赤さと、夕日の赤さが重なって、彼女は真っ赤になって、夕焼けの中に溶けていきそうだった。
「...ねえ、優衣ちゃん」
「ん?」
「君は...好きな人、いるの?」
「え?」
勇気を出して聞いたその一言は、なんだか震えてしまったような気がした。
「...内緒」
君は、とても綺麗な顔で、笑った。
そうしてボクらは、明日の時間と場所を決めて別れた。
君の笑顔を思って迎えた夜は、とても穏やかに眠ることが出来た。