第5章 嫉妬
結局、試合は6-2で負けた。
でも、最後までボクはボクを失わずに試合が出来た。
それだけでも収穫だ。
「不二くん!!」
「優衣ちゃん」
試合が終わったあと、彼女はボクの所へ駆け寄ってきた。
「お疲れ様!途中どうなっちゃうかと思ったけど、なんとかなって良かった~」
「優衣ちゃんのおかげだよ、声、かけてくれてありがとう」
「ううん、不二くんが珍しく動揺してたから、どうにかしなきゃって思って、思わず声かけちゃった」
「聴覚、失ってなくて良かったって思えた瞬間だった。君がボクの、名前を呼んでくれたとき」
『周助くん、頑張って!』
あれだけでボクは、死にそうなくらい嬉しかった。
だから、君のおかげで緊張から抜け出せたんだ。
「今考えると、あれは恥ずかしかったなぁ...」
「...別に、ずっと名前で呼んでくれてもいいよ?」
「え!?それはちょっと恥ずかしい...かな...?」
真っ赤になって顔を俯かせる君は、やっぱり可愛い。