第2章 彼女の傷
女どもがターゲットにしたのは、優衣ではなく弟の彰だった。彰も優衣と似て運動神経が良くてな、彰は陸上選手だったんだ。
女どもは彰を呼び出し、恨むなら姉を恨め、と彰の足をカッターで刺した。
そうして優衣の弟は、陸上を諦めざるをえなくなった。
まあ、あいつの弟も人間が出来ていてな、姉ちゃんのせいじゃないって言っていたらしいんだが、彼女はそんな女どもを放っておいた自分自身を許せなかった。
自分が傷つけられるなら耐えられたが、弟まで巻き込まれて、そこまでしてテニスは続けられない、と彼女はテニスをやめた。
俺が事を知ったのは、優衣がテニスクラブをやめてから、女どもと優衣の弟に詰め寄って発覚した。
その時にはもう、謝ることも、出来ない状況だったんだ。