第2章 彼女の傷
「...やっぱり、疲れてるんだよねぇ」
翌日、図書室に本を借りに行くと、端の席で眠ってしまっている彼女を見つけた。
机の上にあるのはテニス関連の本と、多分データが取ってあるであろうノート。
部活の時間以外にもボク達に時間をかけてるんじゃないかって、内心思っていたけど本当にそうだったなんてなぁ...。
嬉しいけど、君が倒れてしまったら意味がないんだよ?
「手塚さーん」
図書室だし大きな声は出せない。
少し小さめな声で呼んでみたけど、彼女はスースー眠っている。
まだ昼休みは時間があるけど、このままじゃ起きなくて5限に遅れちゃいそうだ。
「おーい...遅刻しちゃうよー?」
「ん...」
少し肩を揺すってみると、ちょっとだけ反応があった。
...彼女に触るだけで、ボクはすごく緊張するんだけど。
まだ起きそうにない彼女は、穏やかな顔で眠っている。
起こすのが可哀想になっちゃうな...
「......優衣ちゃん、起きないと遅刻しちゃうよ?」
「んぅ...」
もう少し強く揺すると、彼女はゆっくりと目を開けた。
「...ぅえ?不二くん?」
「おはよ、手塚さん」
「え、私寝てた?」
「うん、すごく気持ちよさそうに寝てたよ」
「うわぁ恥ずかしい...起こしてくれてありがとう」
「いえいえ、まだもう少し時間あるし、寝る?」
「いやいやもう大丈夫......不二くん顔赤いけど具合悪い?保健室行く?」
「え?......いや、大丈夫」
「そう?無理しちゃダメだよ?」
『優衣ちゃん』
君を名前で呼んでみたかった。
ただそれだけなんだけど、こんなに恥ずかしいなんて思わなかったな。