第2章 彼女の傷
それからというもの、我ら青学男子テニス部に正式にマネージャーとして入部した手塚さんは、ほぼ毎日部に顔を出し、沢山の仕事を請け負っていた。
それに、彼女がやってくれるのは何もレギュラーだけの世話ではない。
驚いたことに、レギュラーではない、その他全員のデータをチェックして、アドバイス出来る所はしているみたいだ。
手塚さん...実は分身できるとかそういう能力でも持ってるのか。
そう思ってしまうほど、1度に観察できる量が半端ではなかった。
目がいい、というか、視野が広いらしい。
全く、本当にすごい子だよ。
彼女は今、レギュラー以外の部員の練習試合のデータを取っている。
物凄い集中力と洞察力で、こうなると少し声をかけたくらいでは気付かないレベルだ。
目が大きな彼女にあんな風に見られると、少し足が竦んでしまいそうになるけどね。
「ゲームカウント6-4!ゲームウォンバイ鈴木!」
「くっそ~負けた!鈴木に負けたことないのに!」
「俺だって毎日練習してるんだぜ、そう毎回勝ちを譲ってられねーよ!」
「それにしても、お前格段に動きが良くなったなー」
「ああ、それは優衣さんに指摘されたところ直したからだな、めちゃくちゃ動きやすくなった」
「あー優衣さんのアドバイス、すげー的確だよなあ。俺も前言われたところ直しただけで、サーブが入るようになったからなぁ」
彼女のお陰で、部活全体の戦力が上がっている。
乾は、主に自分の為にデータを取っている。
だから、レギュラーの俺たちのデータしか基本取らないし、最低限のアドバイスしかしない。
逆に彼女は部員じゃないし、選手でもないから、部員全員のデータを把握し、それを分析してアドバイスをくれる。
決して部員の数が少ない訳じゃないから、大変なことだと思うんだけど、それでも彼女は楽しそうに試合を観察してる。
彼女がテニスから離れないでくれて、本当に良かった。