第1章 はじまり
彼女の動きが止まった。
突然のことに驚いて、頭が付いていかないみたいだ。
「優衣...お前は、もう、お前自身を、赦してもいいんだ」
「国光...」
「確かに、お前がテニスをしなかったら生まれなかった傷かもしれない。でも、お前がテニスをしてくれていたおかげで、俺たちは...救われた」
彼女の目がキラリと光った。
「だから...俺たちのマネージャーとして、部活を、皆を、支えてくれないか。俺たちは、お前が必要なんだ」
手塚がそう言うと、彼女は暫く俯いたあと、振り返ってボクの方を見た。
「っ!」
「不二くん...私の負け。...もう、これ以上試合を...続けられないや」
「ああ...ボクの、ボクたちの勝ちだね」
「うん......私を、赦してくれて、必要としてくれてありがとう...」
彼女は涙を流しながら笑った。
その姿は、夕日に照らされて、泣きそうな程に綺麗だった。
そうしてボクは、本気で彼女に恋をしたんだ。