第7章 目指すは女神の森
「あー…暇」
時刻は17:00。拠点に戻ってきた3人。華楓は夕飯作り、陽二は自室にこもり絵を描いている。この世界にはテレビもないので竜紀はすることも無くぼーっとしている。
「自分の部屋にでも行けばいいじゃん」
華楓はキッチンからリビングにいる竜紀に向かっていう。
「自分の部屋に行っても備え付けのベッドしかねーからな…」
ここの物件はベッドなどの大型家具と食器などすぐ入居ができるように備え付けてある。
「そういうのも含めての買い出しでしょ?だから陽二くんは画材買ってきたんだよ」
「あーまじ馬鹿じゃん数時間前の俺…」
はぁとため息をつく竜紀。
「そんなに暇なら野菜切るの手伝って」
「はいはい」
「つまみ食いはダメだからね」
「しねーよ」
いつもと変わらぬ会話がキッチンに響く。
「夫婦みたいだな」
独り言のように竜紀が呟いた言葉は華楓にも聞こえていたようで、
「…はっはぁ?何言ってんの夫婦とかないから~」
取り乱したように顔を赤くして言った。
「えっ?あっ!いや別にそういう意味で言ったんじゃねぇんだけど…」
お互いに照れて気まずい空気になる。
「何してんの?」
その時自室にこもっていた陽二が部屋から出てきてリビングに立っていた。
「陽二くん!?」
「べっ別に何もねぇよ!」
「ふーん…」
じーっと竜紀を見つめる陽二。
「陽二くんの方こそ、どっどうしたの?」
華楓は焦りでまだ口が回らない。
「喉乾いたからお茶取りに来ただけ」
「そっそうなんだ…」
陽二は冷蔵庫を開けて麦茶を取り出した。この世界には喉が渇いたなどの生理的欲求はある。脳内がリンクされているので実際に飲み食いしたものが胃に入るという訳ではないが、視覚的な食べた、飲んだという感覚がある。
「あ、絵の方は順調?」
「うん、まあね」
「頑張ってね」
華楓に一声かけられそのまま自室に戻った陽二。
部屋に置いてあったキャンバスには1人の女性が描かれていた。
「今度はモデルになってもらおう」
ぼそっと呟いた陽二はまたキャンバスに向かって筆を滑らしていく。