第6章 能力と女神
恋雪が取り出したのは分厚い書物だった。
「私大学でライバ神話を専攻しているの」
「この世界に大学あるんですか?」
「現実世界で大学に行くことの出来ない人のために学校なども設けてあるの。私、身寄りがいなくて今は施設で暮らしてるのよ。後は入院生活だったりで学校に行けない人のためにここには学校があるの」
そしてもう一つ恋雪がとりだしたのはこの世界の学校案内パンフレット。そこには幼稚園から大学までびっしりと書いてあった。
「こんなにあるんですね…」
「あの、ライバって何ですか?」
陽二は先程恋雪の話に出たライバについて聞いた。
「ライバはここ異世界の総称。女神が作り出したとされる世界なの」
「じゃあ部屋で見た切り抜きはこの世界の新聞だったんだ…」
「ライバ新聞のことね、ライバ新聞はライバで唯一の新聞なの、テレビとかラジオもあるんだけど、ここでは新聞さえ読んでいれば話題にはついていけるのよ」
恋雪のアドバイスになるほどと頷く3人。この世界、ライバの細かな世界観に感心しているのである。
「元々ライバは入退院を繰り返す人や私みたいに施設で育ったり学校に行けない人のための社会勉強のために作られた世界だったみたいなの、今でもその用途で使われることも多いみたい」
「あれ、なんで私たちここにいるの?」
突然我に返ったように華楓は言った。
「お前何言ってんだ?」
「俺達ちゃんと約束してここに来ただろ?」
「いやいやそうじゃなくて、根本的に。なんで私たちはこの世界に来ることになったの?」
険しい顔で考え込む華楓。華楓に言われてそういえばと思う竜紀と陽二。その様子を見て恋雪が声をかける。
「3人は自分の意思で来たのではないの?」
「私たち…昨日突然ここに来たみたいなんです。目が覚めたら、ライバにいて…」
不思議なこの状況にまた不安に駆られる華楓。
「…稀に見る選ばれた者なのかしら?…」
「選ばれた者…」
なぜ自分が選ばれたのか不思議でならない華楓。だがそれは他の2人も同じであった。