第6章 能力と女神
先ほどの暴動から少し落ち着いてきた13:30
華楓達は肉屋で肉を買い、恋雪さんからお礼ということで喫茶店に来た。
「今日は食品市を守ってくれて、本当にありがとう」
「いえいえ、もとはといえば竜紀が調子に乗って首つっこんだら相手がキレたのでそれを押さえたまでです」
華楓は話している最中にも関わらず珈琲を口にする竜紀を見逃さず、隣に座っている竜紀のみぞおちに肘を入れた。
「うぉっげほってアツっ!」
「はい紙」
冷静に陽二は竜紀に置いてあったテーブルナフキンを渡した。
「でも本当に助かったわ。いつもなら仕方なく2人に頭下げてるんだけど」
「え、知ってるんですか?」
その場にいなかったのに2人と口にした恋雪に驚いた華楓は思わず聞き返した。
「え、まぁ…ほぼ毎日のようにこういうことされてるからね…あ、昨日の事覚えてる?」
「…はい」
昨日この世界に来たばかり3人にとって昨日のことはまだ記憶に繊細に残っている。
「昨日私途中であなた達を置いて行ってしまったじゃない?あの時もあの客からの苦情対応だったのよ」
思いつめた顔で恋雪は俯く。
「今の様子だと、このようなトラブルが他にあるみたいですが…」
陽二は恋雪の疲れきった表情を見て聞く。
「…ええ、どこの市でも1日1組程のお客様とはよくトラブルになるの。ひどい時は一つの市に1日に10件、合わせて100件ほどになることもあるのよ…」
「まじかよ…」
先程華楓からみぞおちにダメージを食らった竜紀はきちんと話を聞いている。
「事実この世界、この国が問題を抱えていることに変わりはないから。問題が解決しなければ恐らくこの事態は変わらない」
「問題…とは…」
ゆくゆくはこの世界に馴染んでいくことになるのではと想像している華楓にとっては、その問題を知るのは大きな決断の一つかもしれない。
「身分の差やこの世界が生み出す問題による治安悪化よ。世界のシステムにより生み出される問題は正直私たちでどうにかなるような問題ではないけど…せめて階級問題だけでも…」
「女性第一…ですか?」
「…ええ」