第5章 女尊男卑
「前に並んでたやつが欲しかった肉を買ったことで売り切れになって怒ってるみたいだな」
「みたいね」
竜紀と華楓は呆れて野次馬に紛れて見ていた。呆れているのは陽二も同じで
「先に並んでいた人が買ったんだから別に何も悪くないだろ」
「あ、でも…」
ふと華楓は家を出る前に見た新聞を思い出した。
「なんで先に並んでいた僕が怒られるんだよ!君は並んだ時は女性を連れてもなかったしいるとも言わなかったじゃないか!」
先に肉を買った男性もこの理不尽な状況に何も言わずにはいられない。
「何よ、あんたこの世界にいて女性に尊敬の意はないわけ?」
女性は上からの口調で男性客に言いつける。
「やっぱり…この世界女性第一なんだよ」
華楓は独り言のように言うがそれを竜紀は聞いていたようで
「は?意味わかんねぇ」
「おっおい!竜紀!」
陽二が引き留めようとした時にはもう遅く、竜紀は野次馬を引き裂いてカップルの前にいた。
「竜紀!」
華楓も竜紀を引き留めようとするが野次馬の声で聞こえない。
「あんたらよ、さっきから聞いてればめちゃくちゃなこと言うな」
「は?あんた誰よ?」
「あんたが並んでたんじゃなくてこいつが並んでたんだろ、例え女優先とかだろうとこいつが並んでたんなら店に文句なんか言えねーだろ?」
正しいこととはいえ、何も考えずに女に言った竜紀を見て慌てて止めに入る華楓。
「すみません、すみません…ちょっと竜紀!何してんの!!…ごめんなさい、まだこの世界に来たばかりなもので…」
目でもうやめろと竜紀に訴える華楓だったが通じるわけもなく
「お前ら店員とあいつに謝れよ、こいつら悪くねぇんだからよ」
「は?私が男どもに謝ると思ってんの?馬鹿じゃないの?」
その時華楓の頭の中で何かが切れるような音がした。
「女ならいいの?」
「は?」
「それなら女ならいいのかって聞いてんだよ」
「華楓お前」
いきなり口を割った華楓に竜紀も驚く。
「へぇ…男が男なら女も女ね…」
そう言うと女は指を鳴らし細剣を取り出した。