第1章 先生好きだよ
あれから特に先生とは進展無し
チョコうまかったぞって期待してたのに
いくら先生が口下手でも感想位くれてもいいのに
大好きな日本史の授業が退屈で仕方ない
好きっていう気持ちが落ち着いてきたのかな
私の不安をよそに授業が終わってしまった
「おい」
「はい!」
先生の切れ長な目が私を見ている
前言撤回
やっぱり好きは落ち着かない
「なんですか?」
平然を装う強がりな私
「放課後、屋上にこい」
頭が沸騰する様な感覚に陥る
もしや、これは漫画でよく見る…
いやいや違う
先生ならそんな回りくどいことは出来ない
だって見るからに不器用そうだもん
傷つきたく無いから期待したくない
だけど人間って本当に勝手
どんどん自分に都合よく物事考えて。
だけどね、先生
私は先生の為ならいくらでも傷付いていいんだ
先生に付けられる傷なら幸せってもんよ
例の如く残りの授業なんて全く聞かずに
放課後になる
「先生きたよ」
「あぁ少し待て」
先生は何故か私に背を向けて
何かを足で踏み潰している
そしてあのバニラの香りを漂わせながら
私に向かって歩いてくる
「何かいるものはあるか」
頭の上にはてながたくさん浮かぶ
いるものってなんだ?
「いるものって?」
「その…お返しだ」
「チョコの?」
そうだと言わんばかりに目で言葉を返す先生
きっと彼なりの優しさなんだ
期待はしないって決めたのに
期待通りに進む事に思わず胸が躍る
「何ならいい?」
イタズラっぽく笑いかけてみる
こんなテクで先生が落ちるはずないけど
「何でもいい」
「じゃあどっか連れてって欲しいな」
どうせ断られるはず
生徒と教師は学校外で会っても話すだけ
一緒に行動なんて駄目だもん
心では分かっているのに口をついて出てしまった
「分かった」
え?聞き間違いかな?
予想外の回答にきょとんとする私に追い打ちをかける
「流れ星でも見に山いくか」
少し目尻を下げ提案してきた
この先生は一体どこまで私を殺しにかかるんだろう
「つ、付き合ってあげる」
先生は驚いた様に目を開いた
「じゃあ明後日の夜に迎えにいく」
「わかった」
私は動じませんよ?的な雰囲気を醸し出した
でも内心嬉しすぎて木こりが心臓を打つみたい
脈が聞こえる位飛び跳ねている
先生はそのまま屋上の扉をあけて
一人で降りていってしまった