第1章 先生好きだよ
授業がすべて終わり
風紀委員の元にチョコ奪還という名の懇願をしにきた
「お願いします返してください」
「これおいしそうじゃん食べたい」
「だめ返して」
「えー食べたい」
この風紀委員
包丁くんは甘い物が好き
だからって私のチョコを食べようとしないでほしい
何回も上記のやりとりを繰り返し
やっとチョコを取り返した私はそのまま職員室へ向かう
「失礼します」
声も手も足も震える
一世一代の大チャンスが目の前にきてるんだから
「大倶利伽羅先生いますか?」
「先生今コンビニに行ったよ」
「もうすぐ帰ってくるんじゃないかなぁ」
先生ってコンビニに行く事あるんだ
なんか、人間なんだなって再確認
そのまま待つのはドキドキするので
勢いに任せてコンビニに向かうことした
今の私はまさに無敵状態だもん
職員室に入った時点で緊張のピークを超えた
今ならやれる
そう思いながら職員室を出て
校門に向かって歩く
もうすぐ私達も卒業する
裸だった桜の木が少し緑付き始めるのを見ると
感慨に耽ってしまう
「あ、ごめんなさい」
こうして物を考えながら歩くから
誰かにぶつかってしまう
その相手は王子様だった
「先生!」
「なんだ」
少し変わった香水?の様な匂いがする
甘いバニラの様な匂い
頭がくらくらして言葉が思う通りに紡げない
「これ、先生、作った…」
少し沈黙が流れる
「…ありがとう」
照れたような?
目尻がちょっと下がった顔でお礼をしてくれた
お礼をするのは私の方なのに
「受け取ってくれてありがとうございます」
やや俯きながら先生にお礼をする
先生は困った顔をした
でもそんな顔も初めて見られて幸せ
勇気を出して頑張って良かったと心から思った
その瞬間
私の頭に手が伸びてきて
髪を乱雑に扱われる
「あ、え…」
驚きすぎて素っ頓狂な声が出た
これは恥ずかしい
「嫌だったか、すまない
こういうのは慣れなくてな」
さっきまでの表情が消え
自分の頭の悪さを責めてしまう
「早く帰れよ」
いつもの先生に戻った
悔しさを噛み締める
素直に身を任せていれば良かったのに
この口が!口が!
思わず自分の口を指で挟んでひっぱる
ため息をつきながらも
先生の言う通り帰り路に着くことにした