第1章 先生好きだよ
以前みたいに日本史の授業で
黒板じゃなく先生を見つめることもない
そもそも授業がもうない
今日は卒業式
長かった3年間に終わりが来た
高校に入った時は
いつも皆でふざけて
バイトして遊びに行ったりって夢見てた
だけど現実は違った
皆とはそれなりに仲良くて
話したり遊んだりもしたけど
心の一番に先生がいたから。
普通の青春とはちょっと違う
先生に恋する生徒と
生徒に恋する生徒は違う
いやこれも違う
たぶん私は恋に恋をした。
3年間を振り返っている内に卒業式は終わった
燭台切先生と付き合っている彼女が
またしても女の子に囲まれている
「先生とどうすんの?」
「このまま付き合うんだ」
「えー!すごーい」
高校生とは言えど所詮乙女
少女漫画の様な出来事に皆が心を踊らせる
無関心を貫く私は屋上に向かった
最後だから一番好きな場所に一人でいたくて。
だけどそこには先客がいた
「先生また煙草吸ってんじゃん」
「駄目なのか」
「仕事サボってるんでしょ」
「違う」
「ならいいんじゃない?」
いつかの様に先生の隣に座る
この匂いも声も全てが最後
「お前は何をしに来た」
鋭い視線が突き刺さる
「そりゃ決まってるでしょシャボン玉」
「まだ持っていたのか」
「もう液無くなっちゃうんだ」
「買えばいいだろう」
「買わないよ」
買えば未練が出来ちゃうから
終わらせるために買わないんだよ
「買ってやろうか?」
「要らないよー」
「そうか」
少し寂しげな声色になる先生
「もう私も卒業だよ」
「あぁおめでとう」
「先生には一杯お世話になりましま!」
「噛んでるぞ」
「あはは、先生ツッコミ上手いね」
いつも以上に和んだ雰囲気
「すまなかった」
「なにが?」
「結局口約束のままだ」
「流れ星!」
「そうだ」
「気にしないくていいよ」
「そうか」
長い沈黙が流れる