第1章 先生好きだよ
燭台切先生と付き合ったという彼女達は
カラオケに行って女子会をするらしい
適当にお断りし
私は屋上に座り込みシャボン玉を吹いていた
神様は私の事を好きなのか嫌いなのか
いまいち分からない
どちらかである事は確か
だって彼が私の隣に立って煙草吸ってるんだもん
「心配したぞ」
「うん」
「大丈夫か」
「うん」
「風邪だったのか?」
「うん」
心を無にしたままの私と
心の底から心配する彼。
「何していたんだ?」
「うん」
「うんじゃなくて」
「うん」
「話したくないのか」
「先生?」
「先生は大人だから煙草吸えていいな
煙草吸ったらイライラとかなくなるんでしょ?
私も大人になったら吸っていい?
てかそんなに心配しなくていいよ
私こう見えて強いから
わがまま言っちゃってごめんね
とっ散らかった言葉で傷つけてごめんね」
無表情のまま淡々と彼に伝えた
もう下手くそな恋を終わりにしたかった
「あぁ」
「先生に会いたくなかったのは本当」
「あぁ」
「でも電話凄く嬉しかったよ心配も全部嬉しかった」
「あぁ」
周囲に甘い匂いが漂う
大好きな匂い
「先生夏の事覚えてる?」
「雨の日の事か?」
「そうそう、私が傘忘れちゃってさ
先生がジャケット貸してくれて」
「そんな事もあったな」
「あの時私先生をね」
「あぁ」
「実は優しい人なんだなって思った」
「優しい…か」
「優しさを上手にだせないんだよね」
「…」
「その不器用さも先生らしいよ
これからも頑張ってよね」
そう告げて私は屋上を後にした
これ以上一緒に居ると本当の事が口から出てしまう
好きだって言ってしまう
追いかけてきて欲しくて
ゆっくり歩いてみた
だけど先生は来ない
これ以上惨めになりたくなくて
走って学校から出る
タイミング良く曇り空が泣き出した
つられて私も涙が止まらなくなる
少し立ち止まってみる
また先生がジャケットを貸してくれるかも
そんな淡い期待を抱いたから
でも先生は来ない
5分待っても来ない
本当に恋が終わった気がした
先生にならいくら傷付けられても構わない
その気持ちが弾けて消えた
もう傷つきたく無い