bond of violet【文豪ストレイドッグス】
第2章 青い瞳
繁華街はいつも通り、人がごった返していた。
海外の観光客も多く、金髪で青い目のクロちゃんが目立って仕方が無いということは無かった。むしろ小柄なクロちゃんが時折人混みに飲まれて流され、その度焦るハメになった。
「あの漢字は“いんしょく”、あれは“ちゅうしゃじょう”」
「…はい。記憶しました。」
何度も流されてもらっては困るので腕をぐっと掴み、指を指しながら説明する。
やはり反応が乏しく、表情は一切変わらなかったが、僕の指を指す方向をその青い目で必死に追っている姿を見ると、あぁ頑張っているんだなと少し頬が緩んだ。
これはどれであれはなんで、と延々と続けていたところ、辺りはあっという間に赤く染まっていった。
「……夕焼け…小焼け…です。」
自分から言葉を発することのなかったクロちゃんの口から子供のような言葉がポロリと零れた。
「敦さん。もう帰りましょう。」
「あー、もうこんな時間か。…疲れちゃった?」
「問題ありません。」
「じゃあもう帰ろう。」
さっきの紛争も決着がついたようで、普通に会話できるようになっていた。
掴んでいた腕をぱっと離し、踵を返した。