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bond of violet【文豪ストレイドッグス】

第2章 青い瞳




いい匂いがしてそちらに顔を向けると、クレープ屋さんが目に止まった。
そしてふと思い出す。


鏡花ちゃんとも、食べたっけ。


「クロちゃん。一緒にクレープ食べる?」
「…何故ですか?」
「えっ、うーん……頑張ったご褒美?」
「ご褒美……ですか。」


うむ、と考え込むクロちゃんに、僕は最大限の笑顔を送る。


「今日はよく頑張ったよ!だから、僕の奢り!」


財布の中身は決して多くないが、何となく、後輩に格好をつけたかった。


「どれがいい?」
「…赤……苺が…いいです。」


メニューを眺め声をかけると、クロちゃんは案外すぐに答えた。なんでもいいと言うと思ってた。初めてクロちゃんが自分の意志を示したように感じて少し驚いた。


2人をで並んでベンチに座り、クレープを食べる。クロちゃんを見ると、黙々と食べ進めていた。


なぜだかクロちゃんのさっきの言葉が頭の中で蘇る。


「幸せにならなければならないって…どういうこと?」


僕が質問すれば、クロちゃんは食べるのを一旦やめ、口を開く。相変わらず儚い声だった。


「……大切な約束を果たす為です。」
「やく、そく…。」
「約束を果たすために、私は生きていかなければならないのです。絶対に、死んではならないのです。沢山の人の記憶に、残らなければ成らないのです。」


クロちゃんの横顔が夕陽で照らされ、キラキラとして見えた。表情は変わっていないはずなのに、約束と零したその顔は、なぜだかどこか物憂げに見えた。


青い瞳に夕陽が写り、その目は赤く見えた。その横顔は、何処かで見たような気がして、どうしてか胸が詰まった。


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