bond of violet【文豪ストレイドッグス】
第4章 青い花
「それは、“悲しみ”だ。」
「“悲しみ”…。これが…。」
クロードは胸を擦り、国木田を見つめ返した。
夕日が沈みかける事務所にふたり、向かい合っていた。
クロードは立って。
国木田は座って。
クロードの教師をしている国木田ならと彼女は答えを乞うたのだった。
案の定答えは帰ってきたが、彼女はまだ不満げな顔をした。
「今日、敦さんに。…なんて言うのが正しいのか。何が正解なのか、わからなかったんです。彼の感情を理解したかったのです。そしたらこんなにも、苦しいのです。」
「何が正しいかなぞわかるものではない。人の感情などもな。」
「…。」
国木田の堅実な答えに、クロードは黙り込む。
彼女の髪がサラリと揺れた。
「私は、」
「お前は、感情に触れていない。触れた経験が、圧倒的に少ないのだろう。記憶が無いなら尚更のこと。」
伏せた長いまつげを、彼女はゆっくり持ち上げる。
瞳は夕日を反射して、紅く光る。
「どうすれば。」
国木田はゆっくり、何も変わらず当たり前のように言った。
「まず、本を読むんだ。クロード。彼らの感情に、まず触れるのだ。」
夕日が翳ると彼女の瞳は、青く、美しく輝いた。