bond of violet【文豪ストレイドッグス】
第4章 青い花
捜査のあいだ、クロードはただ彼らの動きを見ていた。
見て学ぼうと、慣れようと、言われたままに動いた。
この事件は、殺人事件なんかではなくて、ただの事故だった。
被害者は、敦の育ての親のような、敦と深い関係を持った者であったそうだ。
様々なことがわかった。
敦が彼を憎んでいること。
彼は敦への祝いを告げるため、花束を買っていたこと。
彼への愛が、歪んでいながらも真っ直ぐ、存在していたこと。
敦は、苦悩していた。
途中、敦の纏う空気が一変したのを、クロードは見逃してはいなかった。
捜査後、彼が1人で蹲っているのも。
太宰とふたり、何かを話しているのも。
クロードには気になって仕方がなかった。
蹲る彼を見るたび、胸がつっかえて仕方がなかった。
ベンチに座り込む敦の前に、クロードは立つ。
「帰りましょう、敦さん。」
「ごめん、放っておいて、くれないかな。」
敦は静かに、掠れるような声で言った。
クロードを突き放すように。
「しかし、」
「…そうだね…もう、帰ろうか。」
「そ……ですか」
クロードは突き飛ばされたように、後ずさる。
そして、どこか胸がつっかえるのを感じ、胸をおさえた。
知らない。
わからない。
知りたい。
「…なぜ…“彼”は…尻込みしたのでしょう。…“息子”は…。」
クロードは己の疑問を口に出すことしか知らず、
「…僕には、わからない。僕に父親は、居ないから。もう帰ろう。」
敦は自分の感情の答えを出すことはできなかった。
「…わからない。」
ただひたすら、疑問を投げることしかできなかった。
クロードは、胸を握り顔を顰めた。
感じたことない痛みが、クロードを襲ったから。
「あなたのそんな様子を見るのが、どうして……何が、苦しいのですか?」
クロードはその日、名も知らないまま悲しみを覚えた。
無力な自分を嘆く、悲しみを。