bond of violet【文豪ストレイドッグス】
第4章 青い花
「どんなのが分からないの?国語。」
「今…分からないのは、父親の気持ちです。」
タッタと駆け足をしながら話を続ける。
この間から随分と親しくなった2人は、そう話すこともめずらしく無かった。
「父親……。」
「息子が成功し、その息子に会いに行く父はどうしてか尻込みをするんです。」
「……。」
「なぜ、彼は尻込みするのですか?」
クロードの純粋な質問に、敦は答えることが出来なかった。
父親という言葉に、聞き覚えはない。
「敦さん?」
「あ、いや……なんでもない。」
「敦君、こっちこっち!」
クロードは、不思議そうに敦を見つめた。
そんな目に耐えられなかったように敦は声の方に顔を向ける。その声の主は、温厚な青年、谷崎だった。
「あっ、谷崎さん。えっと、乱歩さんの代理で……。殺人事件ですか?」
「代理?クロちゃんも?」
「はい。私自身、経験がまだ浅いため、同行させていただきました。」
「そっかそっか。乱歩さんはどうして?」
「いや、それが……」
先程の乱歩の様子やらを、敦はざっと説明する。谷崎は其れを聞くと、慣れたように「なら仕方ないね。」とひと言だけ言った。
クロードは、まだ慣れぬ現場をキョロキョロと眺めていた。
「人が、たくさんいます。」
「クロちゃん、あまりキョロキョロしないの。」
クロードの落ち着かぬ頭を敦がガシッと両手でつかみ制する。そんな様子を、谷崎は苦笑いで眺める。
「ええっと……」
そして、谷崎は事件について語り始めた。