bond of violet【文豪ストレイドッグス】
第4章 青い花
「クロちゃんは、国語が苦手なの?」
敦がそう聞くと、クロードは少し目を伏せて言い訳をするように呟いた。
「……人間の…気持ちを予測するのは、1番難しいです。」
その姿から、出来ないことにやきもきしているのはなんとなく伝わってくる。
そんな姿を見て敦は、ふっと頬を緩めた。
こんなにも、感情を表せるようになったのかと。
「クロちゃん。人の気持ちを知りたい時はね」
「敦君!この依頼行っといて!」
「え?」
その会話を打ち切ったのは、そんな名探偵の一言だった。
部屋の奥で優雅に座って焼菓子を食べている。
「でも依頼は乱歩さんに……」
「無理!今丁度焼菓子が熱くて美味しいから!」
「あぁ…そうですか…。」
敦は即座にこれを覆すことは不可能だと判断した。この名探偵の決定を覆すことは、世界一美味しい焼菓子を焼くことよりずっと難しいのだ。
「クロちゃんごめんね。また後で教えてあげる。」
さっきまでやきもきしていた目の前の少女に、敦は申し訳なさそうに笑顔を向けた。
それを見ていた名探偵は、またも気まぐれを起こす。
「クロちゃんも一緒に行けばいい。君はまだ事件に立ち会ったこと無いだろう。」
「はい。」
事件に立ち会ったことがない。それについてクロードは素直に頷く。
「で、でも…クロちゃん平気?ちょっと醶いかもしれないよ?」
「はい。平気です。」
「丁度良い。クロード、行ってこい。」
「はい。」
こくんこくんともう2回頷くと、クロードは敦に向かう。
「行きましょう。敦さん。」
「あ…うん。」
さっと動くクロードに、敦は少したじろぐ。
そしてクロードは、この間学んだように隣に立ち敦が出発するのを待った。