第1章 一章
「こんな不摂生な生活ばかりしていたら過労死鯖になるわ…」
最近休みでのんびりしたのっていつだったか。朝から夜まで働いて、家に帰れないと言う事も増えた気がする。転生前を思い出すにここまで死にものぐるいで働いた記憶が全くない。良し、辞めるか。過労死で死にたくないしね!そう思っていたら、まさか辞めると決めた職場で殺人事件が起きるとは思っていなかった。なにより容疑者の一人になるなんて、誰が予想出来ただろうか。
「飛馬さん、貴女は最近良く職場に泊りがけで仕事をしていましたよね…まさかとは思いますが、そこで揉み合いになり上司である加藤さんを」
「そんな訳ないじゃないですか!先ず上司と言うだけでその人とはなんの関わりもないんですよ?言いがかりは止めて頂きたい!」
「でも、上司の加藤さんからパワハラやセクハラを受けていたと…貴女の同僚の女性からお聞きしましたが」
冤罪で裁判沙汰にしてやろうか。と無能な探偵の世界である刑事達に怒りを通り越して呆れてしまいそうになる。誰も助けてくれないなら、私自身がなんとかするしかない。そう世界一有名な名探偵とそのライバルである犯罪界のナポレオンの2人の鯖の姿を思い出して内心力を貸してくれと願いつつ話を視聴した。
「加藤 守(かとう まもる)さん。42歳男性。がビルから転落死しているのを早朝、仕事に来たと言う浅井 一(あさい はじめ)さんが第一発見者であり警察に連絡を入れたようだ。その職場には夜遅くまで仕事をしていた飛馬 柚月さんしかいない」
刑事の話を聞き、考える。つまりだ。上司である加藤さんが転落死をした。夜残っていたのは私しかいない。必然的に私が殺したという事になるが、考えて欲しい。加藤さんとはなんの知り合いでもなければ、体格的にも無理があるだろうと思う。けれどそれを説明する証拠がない。例えば私が加藤さんを屋上に呼び出して突き落としたら犯行だって可能なのだから…
「飛馬さん。貴女は加藤さんに良く頼られていたようですね」
そりゃあ…ネットが使えて当たり前の元未来人だから。とは言えない。キーボードを記入するのが早いのは慣れとしか言えない。だが言わせて欲しい。頼られた事など一度もないし、加藤さんとは本当に知り合いでもなんでもないのだ。パワハラもセクハラも受けていないしこの年になってモテた覚えもない。