第1章 一章
「お兄さん、私はなにも出来ない一般人だからこんな事しか言えないけど…爆弾を止めたら直ぐに逃げて。それ以外言えないけど…部屋がぶっ壊れるより、自分自身の命を大切にして欲しいんだ。どうせ私の部屋の家具がぶっ飛ぶくらいで、その隣の部屋は空き室。命より大事なものはないから…それに折角出会えた縁を無駄にしたくはないし、なにより目覚めが悪いでしょう?それだけ、誘導ありがとう。またね?」
呆気にとられたお兄さんの顔を見上げて笑い階段を降りる。エレベーターで行きたいと思ったが、爆発に巻き込まれて閉じ込められた時が危ないと判断したのだろう、お兄さんは階段を勧めて来た為降りる、降りる。それにしても…これでなにか変わるかどうかなんて分からない。ただ今言える事は、どうかお兄さんが無事でいて欲しい。それくらいしか言えなかった。
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保護された私が振り返った瞬間。耳を塞いでも足りないくらいの大きな爆発音と、瓦礫が崩れる音、キャー!と言う沢山の人の悲鳴などを耳にする。おぉ、神よ。どうか皆に加護をお与え下さいませ。なんてまるでルーラーの聖女様のようにこの世界にいるかどうかも分からない神に願った。
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勿論、私の部屋は吹っ飛んでしまうがちゃんと大事なモノを全て鞄に詰め込んでマンションから出て来た為家具などは使えず痛い出費になるけれど通帳や免許証、などのモノはちゃんと持って来た為なんとかなった。荻原研二…お兄さんは殉職したというニュースを聞かなかった為大丈夫なのかと実家のテレビを見つつチャンネルでポチポチと変えていた。
『海外で有名な会社が、等々日本にも到来!』
と今かなり話題となっており、新聞や雑誌は勿論。テレビでも報道されるくらいになっていた。会社の名前は「アヴァロン」と言い、若くしてやり手の社長とその社員達。大金持ちと言われるセレブや女優、俳優、モデル達しか入れない高級ホテルなどもあるようだ。平凡でまぁまぁ貧乏な私には無縁の話だと、かなり高級感溢れるホテルをテレビで見つめて食パンを頬張った。にしても会社名が「アヴァロン」と言うのがかなり気がかりだが、気の所為かと思い気にしないようにした。
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「ブラック企業、断固反対」
就職した先がブラック企業と言うのが頭が痛い。パソコンも古いし、全部計算やグラフ作りも基本手作業になるのが頂けなかった。早くスマホ時代になりたい。