第1章 一章
「私も柚月に会いたいです、アルトリアと呼んで笑い掛けて欲しい…」
「王よ…」
言葉を沈めていうアルトリアにあわあわと小さく騒ぐ円卓の騎士。なぜならアルトリアは柚月が初めて当てた☆5鯖であり、☆5レアで言うのなら一番の古参であった。まさかマーリンに夢で先を越されるとはと言う事もあり、ダブルショックを受けた幼く凛々しい少女は大きくため息をついていた。
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「見た目は子供、頭脳は大人。か…」
ただ今、私は小学生です。けれどあの死神事名探偵くんがいない事を見て、かなり過去に戻っていたりして?と考えた。相変わらず犯罪が絶えないこの街で、私はモブとして生きていけるんだろうかと深い深いため息をつく。そうだ。ひっそりと過ごそう、誰にも注目されないように目立たず印象を薄くすれば狙われる心配はきっとない、そうしよう。と私なりのモブになる為の特訓を開始した。
勉強、平均。運動、平均。あれ?柚月ちゃんいつの間にいたの?全然気付かなかった…と周りに少しばかりショックな事を言われ続けて、鋼の精神も鍛えられる。そのまま私は小学生、中学生、高校生と無事何事もなく影の薄いモブとして卒業して大学へは行かずに就職した。一人暮らし楽しいなー…なんて思っていたと言うのに、私の隣の空き室が何やら騒がしい。そして一人のお兄さんが血相を変えて私に伝えて来た、爆発物処理班の一人なのかと冷静に考える。
「で、高層マンションの一室で爆発物が発見された…と?」
早く逃げろ!と一般人の私を誘導するお兄さん。その時妙な違和感を感じた。本当さー…私の平穏な日々を返せとか、犯人マジでふざけろよ。と言いたい。
「お兄さん、名前は?私は飛馬柚月って言うんだ、お兄さんってもしかしてもなく爆発物処理班だったりする?」
「今まさに切羽詰まった状況で、そんなほのぼのとした自己紹介されたの初めてだよ」
「ごめんなさい、私カッコイイ人には目がないの…だって運命的じゃない?さながらお兄さんは私の命の恩人か、王子様じゃないかな?」
なんて、悠長でおちゃらけた事を言っている場合ではないのだが私の記憶が正しければこの人は荻原研二さんだろう。私の中のイケメンセンサーがビンビンに反応しているからきっとそうに違いない。いやー…まさか原作から7年前まで過去に戻っているとは恐れ入ったわ。