第1章 一章
転生って本当にあるのね、そう子供の頃に高熱を出して悪夢にうなされ…夢の中でマーリンに出会うまで記憶が戻る事はなかったのだ。アヴァロンで花畑の真ん中で花のお兄さんが嬉しそうに「漸く、君に出会えた…私はずっと君を待っていたんだ。愛しい人よ」なんて甘い口説き文句を言うマーリンに、なんて私に対して都合の良い夢だろうかと彼のイケメン具合にぽかんと口を大きく開けて目を丸くするだけであった。
それから、思い出すように私はfateというスマホゲームをしていて、転生した事を全て思い出した。米花町や杯戸町などの名前や、日本なのにかなり治安が悪いという魔訶不思議な現象も全て転生した世界がコナンだからかと納得もした。今までそれが普通だと思い込んでいた純粋でなにも分かっていなかった子供の私に慣れって怖い。と改めて思う。本当はマーリンと話をしたかったがこれは私の都合の良い夢なのだと考えて、ゆっくりと目を覚ます。今の時代にスマホがないけれど将来は必ずfateのゲームをもう一度やりたいと心に決めた。
「あぁー…でも折角育て上げた私の鯖達が!きっとIDも違うだろうし、そもそも今の時代にスマホ売ってないし、あぁ凄くショック…」
というか転生って普通未来に行くんじゃないの本当、なんでさ。と言いたい。手塩にかけて愛情を込めて育成したというのに…
「会えるなら、会いたいなー…」
なんてぽつりと項垂れるように呟いたーー…
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「ほう、漸く柚月が見付かったか…記憶も戻ったようだな」
海外の最上階のオフィスで、優雅に足を組んだ男はぽつり呟いた。千里眼で全てを見た男は笑みを零す。大変忙しい王様は過労死寸前であるが、柚月に会うまでは死んでも死に切れないとまた仕事に向かい立ち上がった。
「夢の中で彼女の記憶と繋がったからね…可愛らしいくらいの女の子になっていたよ」
「マーリン、言っておきますが…柚月に手を出そうものなら容赦なく切り刻みますよ」
「あはは、僕って信用されてないなー…大丈夫。少し記憶をなくしていたのを呼び戻しただけだよ」
高貴な雰囲気に金髪、碧い瞳をした愛らしく凛々しい少女はマーリンの言葉に苛立つ。会いたい人に今すぐに会いたいというのに、まだその時じゃないと周りに止められていたりした。円卓の騎士も勢揃いの豪華なメンバーで王である少女を宥めていた。