第1章 三成さんと永利さん
「落ち着きや、俺もあっちも本気やないしな。まぁ、多少霊力と体力は持ってかれたけどただの手合せや」
「主は嘘吐きだな。八割は本気だろう?」
「じいちゃんはそういうこと口にせえへんの! あっちのが強いんやからしゃあないやん」
「強かったのかい?」
「おう、強い強い、本気出されたら多分死ぬしかないなぁ……」
ククッと喉を鳴らした永利の言葉に、目を見開いて慌ててすっ飛んできたのは五虎退とその連れである虎五頭で、飛びついてきて埋もれていると相手の方から気配が強くなる。
警戒を表に出す刀剣たちを宥め、よいせ、と立ち上がると永利は三成を見た。
「貴様、本当に人間か?」
「酷いなぁ、俺もお兄はんも人間やろう?」
「……まあな」
「いやぁ……それにしても、お兄はん強いなぁ。幼馴染や刀剣以外で互角とかそれ以上はあんま居らんで、つい誘ってみたんやけど大満足や」
傍まで歩いて行った永利に、三成が不満顔で問いかけて来るのにおどけて首を竦めて見せながら楽しげに言葉を返す。
互いの刀剣たちは未だに警戒をしっぱなしだが、当の主たちは特に気にしていないらしい。
特に永利が楽しげに笑って、懐っこく声を掛けているの。いつの間にか周囲にあった緊張感は薄れていた。