第1章 三成さんと永利さん
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永利の戯れから、ちょっとした果し合いの様子を呈したそこは互いの刀剣たちが固唾を飲んで見守る中、本来の敵である歴史修正主義者たちすら近寄れないような緊迫感を醸し出している。
――一触即発
その言葉がふさわしい空気で、永利は石田三成だと名乗った相手をじっと見ていた。
三成の構えは刀を鞘に収めたまま片手を添え、聞き手は塚のすぐ傍に構えられている。永利の方は現在の愛刀である日本刀を手にしたまま、自然体でゆるりと立っている。
パッと見はとても隙だらけの構えのようでいて、周囲に張り巡らされた網はいかな小さな気配の動きすら察知してどの位置から何が飛んできても対応できると告げていた。
互いの力量を読み合い、真剣勝負であればまさしく死合いになると確信が持ててしまい動く間合いを読み合う。
しんっと静まり返ったその場に、最初の一歩の合図を送ったのは図らずも通り抜けた一陣の風だった。
――キーンッ! ガッ、ガッ、ガキッ! ザザァッ!
強く、その場にいた者の視界全てを攫うような風が吹いた直後、甲高い金属が打ち合う音と次いで地面を滑る様な音が響く。
風が止み、慌てて自分たちの主を確認した刀剣たちは二人してその場に座り込んでいる姿を見て、大慌てで駆け付けて声を掛ける。
当然ながら、永利の方には永利の刀剣たちが集まる。
「えーちゃん!」
「主! どこかお怪我はっ?!」
真っ先に駆け寄るのは、本丸に来てから永利が好んで手合せなどに突き合わせる太郎太刀と次郎太刀。
座り込んだ主の姿にその綺麗な顔の血の気が引いているのを、呼ばれて見上げた永利が苦笑して見上げる。