第1章 三成さんと永利さん
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「男だったか」
「ん?何や女だと思ったん?」
「こう言う事案は乗っ取り目的の女が多い気がするからな」
ああ、それは。
「三成は変な小説読みすぎやな」
「…今は読んでない」
くすくすとからかう様に笑う永利にむすーっと否定して
今は読んでないもん、失敬な。
ああでもこの男は何で凜ちゃんを拐ったかねえ
私が近付くとヒィッと怯えた声を出して
男は私を見て固まる。
「おい貴様、何故この女を狙った」
「ヒッ」
げしっと横っ腹を軽く蹴って転がすと
怯えた様な声で丸くなる
…お前は原作の金吾か
さて、こいつは凜ちゃんを誘拐してどうするつもりだったのやら
ふんずけながら今までを振りかえり
「ふむ…誘拐し凜ちゃん我が物にしてココを乗っ取る感じ?」
あ、当たったのか目を見開いて冷や汗かきはじめた。
「この程度の霊力でまー…厚かましい行為だこと」
「三成の口調が今までに無いくらいゆるっゆるやな」
「自分の本丸ではこうだぞ?貴様には今まで隠してたけど」
ほー新鮮、と私の口調が楽しいのか大人しく聞く体勢に入った永利を横目に
元就から貰った刀をスルリと抜いて男の首に宛がった
「言え、全て吐け。生憎カツ丼は出ないが素直に吐けば斬首は免れるかもしれんな」
「ヒッ!言う!言います!!」
殺気全開に脅せば顔を青ざめた男が自分の計画を吐き始めた
まあ、私の予想通りでしたけど
「永利、この豚の始末どうする?」
「ここは凜ちゃんとそこの蜻蛉切に任すしかないなぁ」
「そうだな、その前に…」
か弱い女の子を誘拐して慰みものにする予定だったと吐いた男を蹴飛ばし
縁側から庭に落として、剥き出しの刀を鞘に納めた後で
「両腕と両足を折れば逃げないだろう」
「そうやな」
「ひいい、ああああ、やめ、やあああああ!」
「待ってください!」
恐怖で泣き始めた男を庇う声に、止める声がした者に向く
恐る恐る、凜が男を見ながら私の腕を掴んで
「石田さんの手を煩わせたくありません」
「この男へは、この蜻蛉切が灸を据えましょう」
凜ちゃん優しいって聞いてたけどここの本丸の刀剣は彼女に優しく、害を為す者にアクティブだったわ。