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三成さんと永利さん

第1章 三成さんと永利さん


永利の説明に、凛の顔色が青ざめ、蜻蛉切の表情が険しくなっていく。それを見ながら今後の対策を提案しようとしたところで三成から声をかけられ、永利が三成を見ると三成はその視線を外へと向けていた。
永利もチラリとそちらを見るが意に介すことなく、視線を戻す。ただし、その表情は先ほどまでの真面目さはなく、ニヤリと何かを企んだ笑みだ。
それを正面から見た蜻蛉切が、僅かに目を見開き、青ざめていた凛がきょとんとした表情を浮かべる。
彼らは凛の膨大過ぎる霊力に慣れ、それに掻き消されるほどの僅かな霊力を感じ分ける能力が訓練されていない。
遠征先や演習、出陣先などでは周囲に満たす霊力がなく、普通の状態である為にその感じ分ける能力の偏りに気付かない。

「アホの子やったなぁ……」

ぼそり、と落とした永利の言葉に三成はふんっと鼻で笑い口角を上げた。
今からどう仕掛け、捉えるかを相談しようとしていた敵の大将が何を思ったか転がり込んできたのだ。狩場にのこのこと現れた草食獣がごとく、である。
それはとても微量な、凛の霊力に飲み込まれ簡単に掻き消えてしまうほどの違和感しかない。何故審神者になれたのか不思議で仕方がないほどの僅かな霊力。
あえて封じてある故なのか、元々こうなのか、それは捕まえてみなければわからないが逆に弱すぎる故に有利に動いてきたのだろう。
その弱さゆえに、反発による霊力の抵抗にも遭わず入り込んできた。
ジリジリとそれはこの部屋へと近づいている。永利はチラリとゲッセイに視線を向ける。

「行け」

一言、永利が告げただけでゲッセイの姿はかき消え、近くの庭で悲鳴が上がった。
ガツン、ガツンと硬いモノを打ちつけるような音が響く。

「コウガ」

驚き固まる蜻蛉切と凛を見ることなく、永利がコウガを短く呼ぶとコウガの姿もかき消え、数瞬後には座敷に面した庭に二頭の大狼と視えない箱に入れられたような恰好で必死に空中を手にした短刀で叩く男が現れた。
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