第1章 三成さんと永利さん
「さぁ、現世に介入いたしましょうか」
布陣を組み終わった刀剣たちが太郎の一言で動き出す。機動力の高い五虎退が飛び出していくのを刀装たちが援護している。
様子を探っている永利には、敵の刀剣たちの一部がどこかへ向かうのが見えていた。
「足止め、と何かを誘ってるんかねぇ……さて、何が来るか」
特に止める気はなく見送りながら、自然と口角の上がる永利は久々に楽しめるとええなぁ……と、喉奥で笑う。
楽しいことは大好きだ、と言わんばかりの表情は誰に見とがめられることなく浮かび、消えていくと後は敵と相対している刀剣たちを見つめる。
経験を積む為に来ているので、現部隊の刀剣たちには多少の差がある。それでも、この程度で負け戦を演じる役者ではないことを永利は確信している。
手出しはしない、ただ眺め、二戦、三戦に突入する刀剣たちを見つめていた。
開戦したばかりの時に感じた気配は確実に近づいてきている。何が出るのか……永利はただ静かに気配がする方へと視線を向けた。