第1章 三成さんと永利さん
02
不意に馬の首を横に振り、進行方向を切り替えた永利に少し間が開いた所で気付いたのは五虎退の虎だった。
「がうぅっ!」
「え? あっ! 主様っ?! み、みなさんっ、主様がっ!」
馬の歩みは遅く、距離はそれほど開いてはいなかったが後ろを歩いていたはずの永利が居ないことで不安になったのだろう五虎退がオロオロとしながら前を歩く他の刀剣たちに声を掛ける。
声はきちんと届き、止まった刀剣たちが振り返った先には更に先に進んでいる永利が見えた。
「主っ?!」
「えーちゃん、どこ行くのーっ!」
「主は時々突飛な行動をするなぁ……どれ、追いかけるか」
立ち止まって慌てる太郎と次郎を横目に、マイペースな三日月が馬を操り一番乗りで永利の後を追う。
それを見た他の刀剣たちは、釣られて馬を操ると後に続いていく。少し馬を走らせれば直ぐに追いつき、三日月が永利の馬の横につけて声を掛けた。
「主、こちらに何がある?」
「んー? 勘、みたいなもんやけど。まぁ、多分面白いもんがあるな」
「面白いもの?」
「ああ、何があるかは行ってみなわからんけど……まぁ、もしかしたら同じ時代に来とる他の刀剣か、俺みたいな審神者、かもなぁ?」
「主様みたいな方が他にもいらっしゃるんですか?」
とことこと、いつの間にか追いついた五虎退が話に混じると、視線を向けた永利がその言い方にクツリと喉を鳴らす。
そうしながら目を細め、そうやねぇ、と楽しげに返事を返していると不意に刀剣たちが敵の気配を察知した。
「主殿!」
「ああ、この手のは覚えがあるね。会ってるか確認して欲しいな」
太郎の呼び声に片手で応じ、索敵をしている青江に布陣を確認して指示を出す永利は、少し外れた所にある違う気配に目を細める。
敵が現れ布陣を組むのに相対している刀剣たちを見ながら、気になる気配の方にも気を配る。