第1章 三成さんと永利さん
永利が何をしたのか解った亜種たちが一斉に襲い掛かってくるのを、ボウガンから刀に再び持ち替えて迎え撃つ。
一体、二体、と倒して行けば永利の背後からジュッ、ジュッと何かが焼ける音がする。一体倒すたびに一体呼び出される、そんな法則でも組み込んであるのかもしれないが永利よりも術者は格下だったらしい。
体当たりする勢いでもびくともしない結界の出来に満足し、口角を上げて亜種を切り倒していく。
胴体と頭を切り離された亜種は、その手にあった刀がパキンという甲高い音を立てて折れると同時に塵となり風に流されていく。
「あー……これ、後で纏めて浄化せんとさすがにあかんかなぁ……」
山になっていく刀たちを見つつ、若干遠い目をして目の前の最後の一振りと思われる亜種を打ち払った。
周囲を見回してこれ以上居ないのを確認してから少し先に居るはずの三成の方へと歩きだせば、凄い速さで駆けてきた三成に頭を叩かれそうになり真剣白羽取りの要領で手を受け止める。
「あっぶなっ……どないしたん、俺お手柄やん?」
「貴様はアホだろう」
「まぁ、ようけ言われるけどそうでもないで? 一応」
「いいや、貴様はアホだ。アホ以外の何物でもない!」
「酷いわぁ……湧いて出る穴塞いできただけなんに」
「近侍くらい連れていけ!」
心臓がいくつあっても足りん! と叫ぶ三成に苦笑しながら、悪びれずに謝罪を口にした永利はピクリと肩を揺らし足元を見る。
「コウガ、おかえり」
『主、敵の将の居場所は確認した。ゲッセイが主の言う通りに道を繋いでいる』
「ん、せやったら行こうか」
名前を呼んだ永利の足元の影からゆらりと這い上がってきた闇色の狼の報告に、満足気に笑んで三成を見るとゲッセイの背に乗って三成を促す。
ついでに、先ほどまで一緒に戦っていた刀剣たちには先に本丸へ帰ることを指示し、何かあれば連絡するからそのまま本丸で待機している様にと告げ二人はコウガの先導でゲッセイが待つゲートの入口へと向かった。