第1章 三成さんと永利さん
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「だからなんで貴様がここに居る」
「えー? そら、今日あたり三成がこの辺に居る気ぃしたから」
「なんだそれは」
とある日、突然出陣についていく! と言った主にまたか、と小さなため息一つで流した刀剣と共に時代へ飛んだ永利は勘が当たったとにんまりしながらゲッセイを放った。
ゲッセイが辿り着いた先に居たのは三成で、ゲッセイの姿を見て目を見開くとがっくりと肩を落としながら後から顔を出した永利に突っ込んでいた。
それだけならば最近の良くある情景だった。呑気に会話をする主たちを横目に、それなりに刀剣たちも会話するようになっており初対面の警戒は大分消えていた。
しかし、その日は常のそれとは違っていた。
いつも通りじゃれ合う主たちを横目に、時折集まってくる敵をなぎ倒しその場にとどまっていた刀剣と永利、三成の前に一匹のこんのすけが飛び出してきたのだ。
「な、なんでここに審神者がお二方もっ?!」
「あー……これか、今日の面白いもん」
「は?」
「いいえ、この際理由は何でもいいです! 良いですから凛様をお助け下さいいいぃいっ!」
空間から飛び出してきたこんのすけが永利と三成を見て驚愕の声を上げるのを見て、永利が楽しげに口元を歪めて言葉を落とすのを三成は聞き逃さなかった。
三成が訝しげな表情で見やり永利に向けて声を発するのと、現れたこんのすけがなりふり構わず飛びついてくるのはほぼ同時だった。
永利と三成の顔に突っ込んでくるこんのすけを寸前で永利が掴み阻止すると、わたわたと四本の足を振りながら必死になるこんのすけを抱っこした。
「とりあえず、落ち着いてみ」
「これが落ち着いてられますかぁぁっ!」
「いや、落ち着け」
「ぴゃっ」
腕に抱きとめられても必死にばたついているこんのすけに永利と三成が声を掛け、その額を突っつくと予想外の刺激に声を上げたこんのすけが漸くピタリと動きを止めた。
「ほい、深呼吸な。吸って、吐いて」
「すぅ、はぁ、すぅ、はぁ」
「落ち着いたか?」
「は、はい! も、申し訳ありません取り乱しました……」