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三成さんと永利さん

第1章 三成さんと永利さん


22

『主……』
『だから言ったでしょう』
「んー……でもなぁ、別に怠いわけでもないしただ身体が熱いだけやん?」

三成に発熱を指摘され布団で簀巻きにされた後、永利は未だに自分の体調について不可解という表情をしていた。
左右ではゆらりと陽炎のように姿を出したゲッセイとコウガが、人ならば呆れ顔だろう雰囲気で見下ろしていた。
言うだけ無駄、と思っているらしいゲッセイとコウガは一応の進言はするが、それ以上は言ってこない。
代わりに刀剣たちが入れ替わり立ち代わり顔を出しては説教をしている。

「そういや、三成は?」
「三成殿なら光忠殿に声を掛けられて厨で粥を作られていますよ」
「あー……それは、悪いことしたなぁ……」
「そう思うならもう少し気をつけられたらいいと思いますが」
「んー……昔はこれくらいはどうってことないっていうか普通に戦闘しとったしなぁ……」

転がっていると眠くなる、と普段から言う永利は今回も動けないように転がされているせいで徐々に意識は眠りの方向へ落ち着いている。
作ってほしい時はレシピと共に届ける食材も、単純な差し入れの時はレシピを付けていない。
基本的には幼馴染に甘えきっているのだが、なんとなくちょっかい掛ければ反応が返ってくる三成も、それを面白がっているらしいその主たる元就も、三成に構う永利を嬉しそうに迎える市も見ていると和む。
ただそれだけの理由でちょっかいを出しているので、三成には非常に災難だろう。
暫くはちょっかい掛けるの止めるかぁ……と、今回の迷惑料をどう返そうかという思考にシフトしながらぼんやりと考えている間に永利は眠りに就いた。
それからどれくらい経ったのか、カタリ、という障子の音に容易に意識を浮上させた永利は目を閉じたまま網を張る。

「あー……三成か」

張った網に触れた霊力で誰かが判り、ぼんやりと目を開けると盆に粥を乗せているらしい三成が顔を覗きこんでいた。
目が合えば、非常に不本意、と顔にでかでかと書かれている表情でそれでも面倒見良く世話を焼く姿が見える。
永利は久々だなぁ、こういうのという感想を浮かべつつ口角を上げる。
基本的に熱などで寝込むことがない永利は、両親にも看病をされた記憶がない。
遠い過去から今まで、寝込んだ時に面倒を見てくれたのは今の幼馴染くらいだったなと思い返す。
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