第1章 三成さんと永利さん
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「三成、貴様はこの男を未だ許せぬのか?」
「え?許してると言うか市に被害が無ければぶっちゃけどうでもいい」
なら良いでは無いかと扇子で叩かれて大人しく座ると
永利の連れて来た太郎と次郎もほっとした様子で此方を見る。
溜め息をついて座れば、永利はケラケラと笑い
市がきょろきょろと目線が動くのが気になった。
私にゃ黒い影がうっすら視えてる程度だけど
市にはハッキリ視えてるんだろうなぁ
「何か視えるのか?」
「あのね三成さま、黒い狼が永利さまの周囲にいるのよ」
「ほー」
市の言葉に感心してると、永利がほうっと笑って
「奥方、視えるんかいな」
「うふふ、永利さまの使い魔?」
「なかなか抜け目のない奥方やねえ」
「義兄上が織田信長だからな」
暫く、市が楽しそうに黒い影を見ていると、気配がこっちに近付いて来て
「おい、茶のお代わりと昨日主が作ったケーキだ」
「お、光世さんきゅ」
視界の端で永利の目が光った気がした
「料理できるん?」
「菓子系統は苦手だったのだがな、審神者になってからレシピを取り寄せる様になったからレパートリーは増えたぞ」
専ら、食事の方が得意だと言うとがしりと手を掴まれて
光世が刀を抜こうとしたのを止め
「…何だ?」
「遊びに来るとき何かお八つ作ってくれへん?」
材料費は払うからーと駄々を捏ねるこの大人どうしよう。
元就、そんな期待を込めた目で見るな。お菓子作りイベント強制ですね!?
まあ、仲良くなる一歩を踏み出せた様で?市が嬉しそうにしてるからいいか。