第1章 三成さんと永利さん
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「永利様! 永利様! こんのすけ戻りましてございますーっ!」
「おう、おかえり。どうやった? 三成嫌がっとったやろ」
囲炉裏のある部屋でのんびりと五虎退が従える虎、五頭に囲まれて毛づくろいを手伝っていた永利は腕に飛び込んできたこんのすけを抱き留めつつクツクツと喉の奥で笑い言う。
初対面で仕掛けた自分に対して、相手が警戒をするのも苦手と思うのも重々承知の永利は一度目の連絡でアポが取れるとは思っていなかった。
そんな永利に、小首を傾げて思い返しながらこんのすけが口を開く。
「どうなのでしょう? 三成様がお答えになる前に、傍に折られた男性と女性がお答えくださりましたし……」
「ん? 女性、は……多分奥方やろうけど、男性?」
「はい! 我が許す、とご快諾下さいましたよ!」
褒めて、と胸を張って言うこんのすけに偉い、偉いと手放しで褒めてやりながら首を傾げる。
三成と会った時には初対面でも演習でも心当たりはなかったが……と思えど、会ったことがない相手が解るわけもないとさっさと意識を切り替えるとひっくり返って出されたこんのすけの腹をぽんぽんと撫でて手を止める。
手が離れるとくるんとひっくりかえってちょこんと座り込む。
「手土産も作ってもらったし、お邪魔してええなら着替えて行こかな」
「主、行かれるなら私も共にして貰えませんでしょうか?」
「ん? 太郎、行きたいん?」
「はーい! あたしも!」
「次郎もかい。まぁ、ええけど。喧嘩売りに行くわけやないから、つか心象多分めっちゃ悪いから一軍全員は連れてけへんで?」
太郎、次郎が顔を覗かせた襖の向こうから、初対面の時に一軍に居たメンバーが顔を覗かせているのに気付き苦笑する。
永利の言葉に明らかに不満、という物は居らずどちらかと言えば永利が迷惑をかけないか心配、という表情の者が多かった。
「あるじさま! 僕、ご一緒しても良いですか?」
「五虎退くらいならええかな。小さい子ぉにまで文句言う奴やないやろし」
「わーい!」