第1章 三成さんと永利さん
緊張した面持ちで頷く五虎退とそれを眺めていた薬研の頭を撫で、残りのメンバーの肩を叩くとステージに立った。
やはり偵察は失敗したが相手の布陣は横隊陣、永利たちの陣が有利になる陣形だった。
「これなら互角程度には出来るかねぇ……さて、どれくらいうちの子らが食い下がれるか」
見物やな、と楽しげに笑んだ永利は対戦側に居る三成を見てにっこりと微笑むとひらひらと手を振る。相手がどう思うかは永利の思考にはない。
そうして始まった演習は、布陣の有利さが三成の率いる刀剣たちとの熟練度の差を埋めて予想通り拮抗した。
三成の率いる刀剣たちの刀は自分から攻めていくスタイルを一貫して持っていたが、対する永利の刀剣たちはその力を削ぎ受け流すスタイルで体力温存型だった。
「はいっ!」
「っ! 当たったか……」
「えいっ」
「これはなかなか」
両者どちらも引かず、躱すこともあれば傷つくこともあり、刀装もボロボロだが未だ勝負がつかないままである。
三ターン目に入りジャッジが両者の様子を見ていた。モニタリングされているお互いの体力や刀装の具合は拮抗している。
三ターン目が終わる頃、そこまで、というジャッジの声が響き刀剣たちは互いに礼をするとステージから出てきた。
「お疲れさん。かなり拮抗しとったけど、楽しめたか?」
「あるじさま! あのっ、そのっ!」
「わかっとるよ。時期を見て、な?」
「はいっ!」
出迎えた永利が声を掛けると、一様にすっきりとした表情で微笑む刀剣たちの中、五虎退が駆け寄ってくる。相手の極になった五虎退に感化されたのは直ぐに分かり、永利が言葉に出来ないそれに応えれば満面の笑みを浮かべた。
それからすぐ、ステージを出ると同じタイミングで出たらしい三成とやはり鉢合わせした。