第1章 三成さんと永利さん
08
転生者、そう言われて永利が微笑むと三成はしまった、というような表情をした。
とはいえ、永利はその過去に特に興味があるわけではない。さらに言えば、永利の方こそ特殊な世界であり話したところで噛み合わないと理解もしている。
ふっと近づいた距離を一気に離すと、ゆったりとした動作で踵を返す。
「まぁ、きっとあんたとは色々違うと思うけどな。とりあえず、そろそろ演習始まってしまうし詳しいことはまた今度、な」
僅かに振り返ってお互い頑張ろうなぁ。と軽い言葉を口にすると後ろ手にひらりと手を振り、少し離れた場所で様子を見ていた自分の本丸の刀剣たちに合流した。
何か声を掛けられた気もした永利だが、後ろは振り返らない。
「主……」
「楽しみやなぁ?」
「ふふっ、そういうえーちゃんが一番楽しそうよぉ?」
「そら、楽しいからなぁ。みんな気張りや」
戻ってきた永利を見て心配そうな太郎と楽しげな次郎が声を掛けてくる。今日のメンバーは熟考の上、昨日と同じだ。
マイペースなのは三日月と青江、楽しげにしているのは次郎と薬研、不安げにしているのが五虎退で心配そうにしているのが太郎だった。
永利は不安そうに虎を抱きしめる五虎退を抱き上げてぽんぽんと頭を撫でると自分が立つステージへと足を向ける。
刀剣たちは特に文句も言わず、チラリと後ろを振り向いてから後に続いた。そうして順当に進んだ演習の対戦は三成とになった。
「青江が大将な。五虎退、薬研はその機動力生かして相手を攪乱。つっても、向こうは極の五虎退と今剣が居るから太郎、次郎も気ぃ付ける事。無理は禁物や」
戦闘開始前の作戦会議。偵察も隠蔽も向こうの方が上手だろうと、永利は布陣についても告げる。
「偵察が無理そうやったら、布陣は鶴翼陣横隊陣で。どっちかっつうと今日のメンバーやと雁行や逆行のが向いとるけど、統率が崩れやすいそっちの陣形やと確実に不利や。どうせなら引き分けたいからな」
「分かったよ」
「後は……せやねぇ……自分らしく、やな。受け流し方は覚えてとるやろ?」
「は、はいっ!」
「ええ子や。さぁ、ほんなら行こか」
最後まで不安そうな五虎退に、負けて元々、と軽く言い頭を撫でてやる。やれることを精一杯やればいいと言い含めれば、モチベーションは多少持ち直したらしい。