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三成さんと永利さん

第1章 三成さんと永利さん


「まぁ、明日行ってのお楽しみってやつや。俺、こういう勘だけは無駄に当たるんよねぇ……。授業のヤマもこれくらい当たってくれれば試験楽なんやけどなぁ」
「何を仰ってるんですか……。編成は明日発表されるんであれば、今日はそれを飲み終わったら寝てください」
「ああ、せやねぇ……充真も心配する程度には霊力削れてたみたいやし、今日は寝とくわ」

小言を言う太郎の声も、はいはい、と軽く流してしまう永利に深いため息が聞こえてくる。しかし、慣れてしまったこの対応に太郎はそれ以上何も言わずに湯呑は後で取りに来るから置いて部屋に戻ってくれと言い置き仕事部屋を去っていく。
外に出て、見上げた空には月が浮かぶ。

「ゲッセイ、コウガ」
『ここに』
『主、大丈夫か? ある程度は削いだが、それでも持っていかれたのは大きい』
「大丈夫や。なぁ、あの石田三成ってお人、面白そうやんなぁ……?」
『またか……ほどほどにしろ』
『ご無理はなさいませんよう』
「わかっとるって、コウガに至っては呆れ口調やめてんか? 俺がこうなんは昔から変わらんやろうに」
『昔から、だからだろう』
「へいへい。まぁ、明日は削られることはないし、寝て起きたら戻るもんやから平気やて」
『ならば、休まれよ』
「ん、ゲッセイ、今日はおおきにな。おやすみ」

永利が口にしたのは、生まれた時から内に住む二頭の大狼で式神だというそれはずっと傍に寄り添っている。
それぞれ特別な力を持っていて、その時々で自分たちの判断で永利を守るために力を使っているのだがあまり表には出てこない。
呼べば返る声に安堵し、続く説法に肩を竦めて苦笑すると就寝の挨拶をしてその夜を終えた。
翌日、予定通り演習に赴いた永利は参加者名簿を見て口角が上がるのを止めなかった。名簿の中には予感通りにあの名前――石田三成がある。

「さあて、あとはくじ運に賭けるのみ、やけど。これは絶対引くやろう?」

ククッと楽しげに喉を鳴らした永利は、そういや名乗るの忘れたから相手が俺に気付くのは会った時かと思い至り今度こそはっきりと笑うと率いてきたメンバーと共に受付に向かった。
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