第1章 三成さんと永利さん
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「はぁ~、久々に大満足や」
本丸に戻って開口一番にそんなことを言った永利は、出陣している間に来ていた幼馴染に両頬を引っ張られつつ説教を受けた。
謝り倒してどうにかこうにか逃げ切って、美味しいご飯を頂いてから仕事部屋に詰めていた。
幼馴染は姉を置いてきているからとご飯を作って直ぐに戻っている。あそこはあそこで特殊だが、その特殊の中に自分も含まれるので永利は特に気にも留めていなかった。
「んー……どないしようなぁ……結構な熟練度みたいやったし、勝つか負けるか、互角っぽいしなぁ……」
「主、何をされてるのですか?」
「明日の演習の編成。見た限り、どっこいよりあっちのが上っぽいからどういう作戦で行くかなぁ、思ってな」
「……珍しいですね?」
「そうか? まぁ、普段は基本的に経験を積むための場として、経験が足りん子ぉメインで連れてくから深く考えんだけやねんけど。明日、当たったらおもろいやろ?」
「確かに、少々気にはなりますが。数多居る審神者との組み合わせ、当たるとは限りませんでしょう」
お茶を盆に乗せ、顔を出したのは本日の近侍だった太郎である。出陣から戻り、風呂で疲れを取ってからは動きやすい恰好になって内番をこなしていた。
現時刻はそろそろ夜も更けはじめた頃。体力がそこそこの短刀たちは既に就寝しており、酒好きが宴会を始めている。
いつもならその酒宴に永利も混ざるが、今日はそこに顔を出さないので様子を見に来た、という所なのだろう。
永利は特に否やを唱えないが至極当然な太郎の言葉に、礼を言ってお茶を受け取りながら少し思案する。
通常ならば対戦はランダムで、こちらからこの相手とやりたいと希望を出すことすら出来ないのが当たり前の事案である。
だがしかし、永利の中では不思議と明日演習に出ればもう一度、あの審神者と相見えるという確信があった。