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【DQ11】星屑の旅人

第8章 騎士の国の旅芸人


「あーもう、言わんこっちゃない…」
と誰ともない呆れかえった呟きが漏れた。
数名の兵士が素早く駆け寄って男をタンカに乗せ、屯所に駆け戻っていくのを見送りながら、残された隊長は咳払いを一つ、
「…決して本意ではない成り行きだが、彼奴が隊章まで預けては致し方ない。すまぬが旅の方よ。どうか我が隊の代理として、レースに出て頂けまいか」
「ええ、もちろんよん。出るからには全力を尽くすわ!」
――剣と名誉に掛けてと、シルビアは答礼をしてみせる。
その完璧な動作に、隊長は眉を上げたが、
「…うむ」
あれこれ考えても仕方がないと悟ったか、シルビアの手を取って短いがきっぱりとした握手を交わした。
シルビアは買い物袋を抱えなおすと、
「ところで隊長ちゃん。肝心のレースっていつなの?」
「…二日後だ。」
「へえ…二日後。って二日後!?あさってじゃない!!」
「う、うむ…」

――だからあの騎兵も取り乱していたのか。

確かにあれほどの怪我が今日明日で治る訳もないが、それにしても、日が迫りすぎている。
ただ誓いを交わしてしまった以上、今になって取り消すわけにもいかない。
「まあ、しょうがないわね…」
シルビアは頬を掻く。
隊長も、いくらか気が咎めたらしく、
「――騎馬と装備は、こちらで出来る限りのものを用意しよう。注文があれば何なりと言ってくれ」
「ありがとう。でも結構よ。お馬ちゃんならアタシの持ち馬があるし。装備もこちらで用意できるからお気遣いなく」
隊長は些か不安げに、
「いや、レースには馬も装備も一定の規格がある。何でもよいというわけには――」
「中央騎士連の統一規格でしょ?安心して頂戴。馬も装備もちゃんと適合済みよん」
「何と――それは助かるが、貴殿、随分と詳しいのだな」
「まーね。あとはそう…流石に会場は見ておきたいわね。レースハウスに許可取って貰えると嬉しいんだけど」
「話をつけておこう。他にあるか?」
「そーねえ…」
考えを巡らせつつ、シルビアははっと一番大切なことを思い出した。

――そうだ。○○、どうしよう…
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