第9章 邂逅
やり取りを見守っていたイレブンがそこでようやく、口を開いた。
「──○○」
はっと顔を上げると、イレブンは幾分か表情を引き締めて、
「シルビアさんの言うことも、ベロニカのいうことも、僕はもっともだと思う」
元々、さほど言葉数が多い方でもないのだろう。イレブンは自分でも慎重に言葉を探して、言った。
「僕たちが向かおうとしている場所は…確かにとても危険だ。人を守っている余裕は、多分この場の誰にもない」
イレブンはシルビアを見る。シルビアの視線は、○○に注がれ続けている。
○○は、それら全てを受け止めて、イレブンの次の言葉を待った。
「だから、決めるのは君だ、○○。」
──息を飲む。
○○は、イレブンの穏やかな佇まいの後ろに、はっきりと二つの道を見た。
危険を厭わずそれでも来るか、諦めて安穏と帰りを待つか。
○○は一度目を閉じた。
訪れる闇。ただ一人の旅路。
──行くんだ、○○
脳裏にまた、誰かの声が響いた。
──何があっても、魂が導くだろう
閃光のような刹那のひらめきだった。
「行きます。私も。」
○○、と少し上ずったシルビアの声がした。が、○○は首を振って、シルビアを見上げた。
「ごめん。シルビア。私やっぱり、待ってるなんてできない」
と彼の腕を取る。触れた瞬間、シルビアの肌がびくりと震えた。
「…お願い」
シルビアは、目を閉じた。深く息を吸って、そしてため息とともに、○○の手の上に自らの掌を重ねた。
──熱く湿っている。○○はシルビアを見上げた。
「…分かったわ」
シルビアは、目を閉じたまま、きっぱりと言った。
決まりね、とベロニカは手にしていた両手杖を頼もしく振りかざす。
「本人が行きたい。イレブンも連れてきたい。そしたらあたしたちに異はないわ。○○、これから宜しくね。」
「宜しくお願いしますわ、○○様」
セーニャは両手を合わせ、おっとりとほほ笑んだ。
──カミュは腕を組んだままイレブンを見た。
「で、お前はいいのか?」
「ん?」
向き直ったイレブンに、カミュは頭を掻きつつ、
「何だかんだで連れてく流れになってるけど…」
「いいとおもうよ。」
イレブンは確かめるように頷いた。
「きっと、大樹の導きだよ」