第2章 デルカダールへ
街道は弱い雨の音に満ちている。
大陸南部からデルカダール王都を結ぶ南部大道は、デルカダール主要道路の一つで、昼間であれば常に往来の絶えない賑やかな大通りだ。
しかしひとたび夜になれば途端に廃道同然のありさまになる。夜に増える魔物が大きな原因の一つだったが、かといって行き来する者が全くいないわけでもない。この隊商馬車もその一つだ。
早晩まで滞在していた町で、シルビアと○○は、臨時の夜行便を捕まえることができた。貨物船の到着が遅れたらしく、急きょ仕立てられたらしい。
有り難い話だった。昼の定期便を使ってもよかったが、そうなると到着は予定より遅れてしまう。正直なところ、今のペースでいけばデルカダールでの興行に間に合うかはぎりぎりだった。
残す懸念材料は天候だけ、それも夜半を過ぎたあたりから雨足もようやく弱まり、この隙をついて、隊商は中継キャンプを出発した。
人と馬の匂いは雨に紛れ、夜間移動にもかかわらず、今のところスライム一匹出会っていない。
便乗した乗合馬車には、○○とシルビアの他にも数名の乗客がいた。
同じく商人らしき風体の者、行商や出稼ぎに向かう若者、それに親子連れ。事情も身なりも様々である。そのほとんどは馬車の小刻みな揺れと雨音に誘われ、深く眠り込んでいた。
小一時間ほど前までは緊張していた○○も、今は一番隅の方で、渡された毛布にくるまって寝息を立てている。
――不思議な子