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【DQ11】星屑の旅人

第7章 夜に陽炎


「シルビア…あの、私」
「んん?」
ふと、シルビアは○○の顔を覗き込む。
その澄んだ表情に返す言葉を、○○は内心に探しまわった。

――なんと、言うべきなのか。

「その、なんていうか、ごめんね」
「ええ?何がよ」
「…心配ばっかりかけて…」
月並みな響きに、鼻の奥がむなしく痛んだが、
「…ほんとよぅ」
シルビアは、意に介す風もなく、ただ両手を上げて伸びをした。
○○に反駁する間も持たせず、
「ずーっと誰かさんが心配だったせいで、ショーの打ち合わせ、全然身が入んなかったんだからねん」
責任取ってもらおうかしら、と片目を瞑ってみせた。
「せ、責任て…?」
シルビアは、○○の鼻先をつつくと、
「お小遣い、確か増えたわよね?」
――ニッと笑う。
「そ、それは…」
○○はうろたえる。
「アタシちょうど、欲しいものがあったのよねん…」
「え、え?」
思わず頬をひきつらせる○○。
それをわざとらしいほど意地の悪い目つきで見たシルビアは、
「なーんてね」
――素早く○○の頬をつまんで、軽く引っ張った。
「あははっ。リスみたーい。かわいい~」
「ちょ、痛いよ、シルビア!」
○○は、シルビアの手を頬から無理に引きはがした。
「やめてよ、もう!」
シルビアは、くすりと身を縮めて、
「ふふ、ごめんなさい」
口元に手を当てて、くすぐったげに笑った。
恨めし気に一瞥を送り、両手で頬をさすったところで○○は気付いた。

――滓になって残っていた不穏が、いつの間にか消えている。

はっと顔を上げて、シルビアを見た。
「シルビア、あの」
「んん?」
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